いま、全世界の英語人口は、約17億5000万人といわれています。全世界の人口は現在、約73億人と推計されていますから、世界の4人に1人が英語でコミュニケーションを行っていることになります。
それだけでなく、現在、そしておそらく将来的にも、インターネット上の支配的な言語は英語です。つまり、英語はグローバルなコミュニケーションに必要な言語なのです。
たとえば、私がテレビのニュース番組でコメントするときなどに、世界的なニュースについて調べていると痛感することですが、英語で調べないと出てこない情報が圧倒的に多いのです。
世界で起こっていることに関しては、英語でなければ正確な情報は得られないし、情報の裏づけをとることもできません。日本語だけで事足りるのは、日本国内の出来事に関する情報だけです。
英語ができないと、世界で流通している情報の9割くらいは把握できないのが現実なのです。これは情報力の面で相当なハンディキャップです。
「でも、将来はAIが翻訳や通訳をしてくれるはず。そうなったら英語ができなくても困らないんじゃないの?」
と考える人がいるかもしれません。
たしかに、現在のAIの翻訳機能はまだ不完全ですが、将来的にはほぼ完璧な翻訳が可能になると思います。ただ、それがいつ実現するのかは、いまの時点ではわかりません。数年後かもしれないし、あるいはなかなかクリアできないハードルがあって、30年くらいかかるかもしれないのです。
それを考えると、グローバルなコミュニケーション言語が英語であるという状況が、今後10~20年は続くという推測のもと、英語を身につけておくべきという結論は変わりません。
インターネット上に流通している言語は、ほとんどが英語です。その英語の情報にふれたとき、それを直接、自分の頭で理解できることの意味は大きいと思います。
AIに翻訳してもらって、日本語で理解するというやり方だと、その翻訳がはたして正確かどうかの判断がつかないので、情報を正しく把握できないおそれがあるからです。
また、小さいころから英語と日本語の両方を身につけてバイリンガルになると、IQ(知能指数)が高くなる傾向があります。
小さいころから二つの言語を同時に頭に入れていくというのは、子どもの脳にとってかなりの負担です。
そのため最初のうちは、一つの言語だけを習得している子どもたちと比べて、テストの成績が劣ります。でも、小学校高学年くらいになると逆転します。
2カ国語の習得にはすごく頭を使いますから、やはり鍛えたぶんだけ頭がよくなるということです。
社会に出てからも、英語と日本語の両方が使えるバイリンガルのほうが、就職口がたくさんあります。日本国内だけでなく、アメリカやイギリスなどの英語圏の国で就職してもいいし、グローバルに展開をする日本の会社や、あるいは日本に進出しようとしている海外の会社など、どこでも働くことができるからです。
ただ、英語ができても、日本語をきちんと習得していないと、日本の会社で働く場合には障害が生じます。
インターナショナルスクールで英語だけで教育を受けて、あまり国語力を養ってこなかったような人は、日本人の上司への報告や説明が十分にできなかったり、めちゃくちゃな文章のメールを打ったりしてトラブルを起こす、という話をたびたび耳にします。
英語ができれば国語はおろそかにしてもいい、というわけではないのです。
引用文献『学年ビリから東大へ進み、作家になった私の勉強法』(竹内薫著 PHP研究所)