「受験というのは、結局は頭のいいヤツには勝てない。勉強していないはずなのに、なぜかできるヤツがいるのはその証拠だろう」
こんなことを考える人も多いと思う。はたして、本当に勉強していなくてもできる人などいるのだろうか。
私はほとんどそんな人はいないと思う。要するに、やっていないように見えても、ちゃんとツボを押さえて要領よく勉強しているのだと思う。あるいは、時間的にはやっていなくても、量的にはそれなりにこなしているはずである。
たとえば、同じ数学の問題を解くにしても、5分で解ける人と30分かかる人がいるとすれば、同じ時間勉強しても、解ける量が六倍ちがうことになる。
英語にしても、一つの長文を20分で読める人は、60分かかる人に比べて3倍できることになるのだ。
たとえば、A君と、単位時間あたりの勉強量が3倍ちがうB君を比べてみるとする。
B君が毎日1時間勉強したとすれば、A君は3時間勉強しても差は縮まらず、引き離されない程度というだけにすぎないだろう。
もちろん、早く問題が解けるとか、英文がたくさん読めるというのも頭のよさといわれたらそれまでだが、ここらへんは、かなり練習にも負うところが大きい。
受験勉強が先手必勝、先行逃げ切りパターンが有利というのは、そのことをいっているのである。
もっとも、中学から勉強のパターンが変わるし、英語も始まるわけだから、中1の初めに子どもがつまずかないようにしておけば、そんなに勉強時間をかけなくても、そのあとはうまくいきやすいだろう。
要するに、できなくなってからあわてて塾に行かせたり家庭教師をつけたりしても損で、最初の基礎でわからないところがないかチェックしておいたほうが有利なのだ。
かりに出遅れたとしても、数学なら解けなければ無理に解こうとせずに解法を暗記したり、計算の練習をしばらくやったりし、また英語は速読練習をしっかりやれば、単位時間あたりにできる勉強量をかなり増やすことができる。こうした基礎トレーニングもせずに勉強すると、時間がいくらあっても足りなくなる。
プロ野球選手も、キャンプのときの走り込みの量がシーズンに大きく影響するという。運動部と同好会の実力の差にしても、この基礎トレーニングの有無が大きいのだ。
受験勉強を成功させるためには、勉強時間でなく、勉強量を増やすにはどうすればよいかということを、つねに頭にたたきこんでおきたい。
引用文献『受験に強い子をつくる! わが子を「勝ち組」にするための必勝受験術』(和田秀樹著 ベスト新書)