学校の勉強に意味はあるのか?(樺沢紫苑)

質問:「高校で習う勉強は、社会人になって実際に使わないので意味がないと聞き、勉強するモチベーションが下がります。高校の勉強にどんな意味がありますか?」(ゆーたさん・17歳・男性)

樺沢:中学の勉強の知識は社会人にも必須です。地理とか歴史とか特に。数学に関してもだいたい使うし、英語ももちろん使うし、国語なんかは必須です。義務教育というだけあって非常に重要です。

 ただ、高校の勉強の知識は社会人で使うか? 私の場合、微分積分は社会人では使いませんでした。医者の世界では、統計は有意差検定など研究に必須な知識でした。高校の勉強の知識は社会人になって、全然使わない知識も、使う知識もあります。では、社会人で使わない知識を勉強する意味は? どうなのかなと思いますが、ちょっと、話を変えます。

 社会的に成功するために必要なことは何か? と考えると、とりあえず、勉強に(ひい)でることがよしとされます。社会的な成功のための勉強。私は別な視点から勉強の必要性を考えます。

 社会に出たときに成功するために必要なものは、「集中力」だと思います。「集中力」がどういうものかというと、例えば、私は本の執筆を10時間連続でできます。もちろん、休憩をはさみますが。休み休みにしても、1日10時間執筆できる人は少ないはずです。なぜ、10時間執筆できるかというと、私は一浪して大学に入ったのですが、浪人時代に1日10時間の勉強をしていたからです。その経験が今になって役に立っています。集中力を維持するための「時間術」は、私の本『神・時間術』にも詳しく書いていますが、やり始めたのは浪人時代だったのです。勉強の集中力を維持するための試行錯誤をしました。

 大学生の頃、塾の講師や家庭教師の経験もあるのですが、勉強ができる子は、頭がいいのではなく「集中力が高い」子でした。逆に、勉強できない子の共通点は「集中力が低い」子でした。

 中学1年生の一番成績の悪いクラスの塾講師をしたことがあるのですが、5分と黙っていることができない子がいました。注意してもすぐにおしゃべり。5分間と集中力が続かない。5分集中が続かない子の成績が良くなるはずがありません。30分集中できない子供は、まちがいなく集中力が低いといえます。

 社会で勉強の知識は関係ないとしても、「集中力」が低くければ成功することは無理です。集中力が高い人は3時間連続で勉強できます。成績の悪い子供は集中して勉強できません。だから、私は「集中力トレーニング」としての勉強はとても意味があると考えています。中学高校で試験勉強などを集中して行う、集中力を身に付けて社会人になる、仕事を一気に集中してこなせる社会人、注意散漫であきらめてしまう社会人、仕事力の底力と非常に関連しているということです。中高生にとっての勉強とは、学校の勉強の意味の有無の議論もあるが、「集中力トレーニング」として必須なんです。だから、1日何時間も勉強する体験が重要になります。あとあと、どんな職業につこうが「集中力」は必要です。「集中力」を必要としない職業はありません。だから、集中力が高い人ほど社会で成功します。1日何時間も勉強することが必ず役に立ちます。それを信じて、しっかりと勉強して集中力を高めてほしいと思います。

出典『精神科医・樺沢紫苑の樺チャンネル』2018/03/01

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