流れを変える人になる(スティーブン・R・コヴィー)

 子どもたちに「翼」を与えるというのは、前の世代から引き継いできた悪い脚本、効果的とはかけ離れた生き方を乗り越える自由を与えることだと思う。私の友人で同僚でもあるテリー・ワーナー博士の言葉を借りれば「流れを変える人」になることだ。実りのない生き方の脚本を次の世代にそのまま手渡すのではなく、その脚本を変えるのである。脚本を書き直し、その過程で人間関係を育てていくのだ。

 仮にあなたが子どもの頃に両親に虐待されたからといって、あなたも自分の子どもを虐待する必要はない。ところが現実には、親に虐待されて育った子どもは、自分が親になって同じようにわが子を虐待する例が非常に多い。しかし、あなたは主体的な人間なのだから、自分からその脚本を書き直すことができる。子どもを虐待しないことを選択できる。そして、子どもを一人の人間として認め、子どもが前向きに生きていく脚本を書いてやることができる。

 そのことを自分の人生のミッション・ステートメントに書き、頭と心に刻みつける。そのミッション・ステートメントに従って生活し、毎日の私的成功を実現している自分の姿を思い描く。さらに、自分の両親を愛し、許し、まだ健在であるなら、まず両親を理解する努力をして、関係を築き直す道を歩み始めることもできる。

 あなたの家族に何世代にもわたって受け継がれてきた悪い流れを、あなたの代で止めることができるのだ。あなたは流れを変える人となり、過去と未来をつなぐ人となる。あなた自身が変わり、流れを変えれば、その後に続く何世代もの人々の人生に大きな影響を与えられるのである。

(中略)

 自分自身と一つになること、愛する人たちや友人、同僚と一つになることが「7つの習慣」の最高で最良、もっとも実りある果実である。誰しも、過去に一度や二度は心を一つにする果実を味わったことがあるだろう。逆に、心がばらばらに離れてしまった寂しく苦い果実も味わっているはずだ。だからこそ私たちは、心が一つになることがいかに貴重で、また同時に壊れやすいものであるかを知っているのである。

 このように心を一つにまとめるためには、誠実な人格を磨き、愛と奉仕の人生を送らなくてはならないのは言うまでもないことだが、それはたやすいことではない。応急処置でどうにかなるものではないのだ。

 だが、それは決してできないことではない。人生の中心に正しい原則を置き、他の中心から生まれたパラダイムと訣別し、無益な習慣の安心領域から出ることによって実現するのである。

 間違うこともあるだろう。気まずい思いをすることもあろう。だが、毎日に私的成功を積み重ね、インサイド・アウトの生き方を一歩ずつ進んでいけば、結果は必ずついてくる。種を蒔き、辛抱強く雑草を抜き、大切に育てれば、本当の成長の喜びを実感できるようになる。そしていつか必ず、矛盾のない効果的な生き方という最高の果実を味わえるのである。

 最後にもう一度エマーソンの言葉を借りよう。「繰り返し行うことは、たやすくなる。行う作業の質が変わるのではなく、行う能力が増すのである

 人生の中心に正しい原則を置き、行うことと行う能力のバランスを考えて努力を続けていくと、効果的で有益な、そして心安らかな生き方ができる力がついてくる。それは私たち自身のためであり、私たちの後に続く者たちのためでもあるのだ。

引用文献『完訳 7つの習慣』(スティーブン・R・コヴィー著 キングベアー出版)

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