しかしいっぽうで、驚異的な粘り強さでがんばって、みごとに結果を出した人たちの話を聞いた。
「その作家は、駆け出しのころはとくに優秀ではありませんでした。社内では彼の原稿を読んで笑ったりしていましたよ。文章が何とも野暮ったくて、メロドラマ風だったんです。でも彼はその後、めきめきと腕を上げて、去年はとうとうグッゲンハイム奨励金を獲得したんです」
また、そういう人たちはつねに貪欲に進歩を目指していた。
「彼女は絶対に満足しません。あそこまで登りつめたら満足してもよさそうなのに。あの人は、自分自身のもっとも手厳しい批評家なんです」
つまり顕著な功績を収めた人たちはみな、粘り強さの鑑のような人だったのだ。
なぜそこまで一心不乱に、仕事に打ち込むことができたのだろうか? そもそも彼らは、自分の目指している大きな目標に、簡単にたどり着けるとは思っていなかった。いつまでたっても、「自分などまだまだだ」と思っていた。まさに自己満足とは正反対だった。
しかしそのじつ、彼らは満足しない自分に満足していた。自分にとってもっとも重要で最大の興味のあることをひたすら研究していた。そして、そんな研究の道のりに――その暁に待ち受けているものと同じくらい――大きな満足をおぼえていた。つまらないことや、イライラすることや、つらいことがあっても、あきらめようとは夢にも思わなかった。彼らは変わらぬ情熱を持ち続けていた。
要するに、どんな分野であれ、大きな成功を収めた人たちには断固たる強い決意があり、それがふたつの形となって表れていた。第一に、このような模範となる人たちは、並外れて粘り強く、努力家だった。第二に、自分がなにを求めているのかをよく理解していた。決意だけでなく、方向性も定まっていたということだ。このように、みごとに結果を出した人たちの特徴は、「情熱」と「粘り強さ」をあわせ持っていることだった。つまり「グリット」(やり抜く力)が強かったのだ。
引用文献『やり抜く力――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』(アンジェラ・ダックワース著 神崎朗子訳 ダイヤモンド社)