「やり抜く力」というのは、ひとつの重要な目標に向かって、長年の努力を続けることだ。
さらに、ピート・キャロル風に言えば、「人生哲学」と呼ぶべきその目標ほど、興味深く重要なことはほかにないため、生活時間の大半の活動は、その目標に向けて行われる。
「やり抜く力」が非常に強い人の場合、中位と下位の目標のほとんどは、何らかの形で最上位の目標と関連している。それとは逆に、各目標がバラバラで関連性が低い場合は、「やり抜く力」が弱いと言える。
では、「やり抜く力」の欠如はどのような形で表れるか、いくつかの例をご紹介しよう。
私はこれまで、将来の夢を持っているたくさんの若者に出会った。「医師になりたい」「NBAのバスケットボール選手になりたい」など、大きな夢を持っていて、その夢が実現したらどんなに素晴らしいことが待っているかと、あれこれ思い描いている。
ところが、夢を実現するための中位や下位の目標を具体的に設定することができない。そのため、目標がピラミッド形の構造になっていない。最上位の目標がぽつんと浮かんでいるだけで、それを支える中位や下位の目標がまったくないのだ。
私のよき友人であり、仲間でもある心理学者のガブリエル・エッティンゲンは、これを「ポジティブな空想」と呼んでいる。
エッティンゲンの研究結果が示しているのは、目標を達成するまでの道のり(とくに大事なのは、どんな障害が待ち受けているか)をしっかりと考えずに、ただバラ色の未来を想像しているだけでは、短期的にはプラスの面があったとしても、長期的にはマイナスになるということだ。
たとえば医師になるという高い目標を掲げることで、短期的にはよい気分になれる。しかし長期的には、目標を達成できなかった失望感に苛まれることになる。
引用文献『やり抜く力――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』(アンジェラ・ダックワース著 神崎朗子訳)ダイヤモンド社