高速で実力が上がる、答え合わせの五原則(谷川祐基)

高速で実力が上がる、答え合わせの5原則

 勉強において「答え合わせ」が重要なのは、小学校から大学受験、そして社会人になってからの資格試験でも変わりありません。

 しかし、そのやり方を教えてもらう機会はなぜかなかなかありません。

 この項では、子どもから大人まで、誰でも高速で実力が上がりだす答え合わせの5つの原則を紹介します。これらの原則はすべて難しいものではありません。どんなに勉強が苦手でも必ず実行できるものです。才能も根性も必要ありません。そして、んなに勉強ができる人でも絶対忘れてはいけない原則ばかりです。

 この本の内容で、ここだけでも実行すると間違いなく成績がアップする技術なのでぜひ使ってみてください。

 ■第一の原則:答え合わせは「すぐ」やる

 学校の宿題を家でやって、翌日の授業でみんなで丸つけをするというケースは多いですが、あまりよろしくありません。答え合わせは、問題を解いたらすぐにするべきです。

 答え合わせの目的はまず、自分の間違いを発見し、それを修正することです。

 問題集では似たような類題がいくつか並んでいることが多いのですが、1問目で間違えると、同じ間違いを抱えたまま2問目、3問目に突入することになります。間違いを修正しないまま先に進むので正答率は悪いままですし、結局身につくものがありません。楽しくもないし効率も悪いですね。

 それに対し、すぐに答え合わせをして間違ったポイントを見つければ、次の問題では修正して正解することができます。間違いを正すことがすなわち実力アップですし、正解が増えれば勉強自体が楽しくなります。

 それに見過ごしてはいけないのは、正解したときの喜びです。大きな喜びを感じるには、なるべく早く答え合わせをした方がよいのです。

 たとえばあなたが阪神ファンだったとします。そして今日は巨人戦です。9回表までは一進一退、5対5で試合が進んできたとします。そして、9回裏、期待の一発が出てサヨナラ勝利になりました!

 阪神ファンなら、飛び上がりたいほど嬉しいですよね。

 さて、これは今日の巨人戦のことでしたが、実は先週の中日戦も同じ展開でした。9回表までは5対5で、9回裏にサヨナラ勝ちだったのです! 嬉しい!

 ……うん、まあ、そんなには嬉しくはないですよね……。そう、先週のサヨナラ勝ちに喜びを感じるのはなかなか難しいのです。同じように、先週の正解に喜びを感じるのはけっこう難しいのです。

 野球なら、試合終了の瞬間がいちばん勝利の喜びを感じられるように、勉強でも問題を解いて正解した瞬間がいちばん、喜びを感じることができるのです。

 間違えの発見は早い方がいいし、正解の喜びも早い方がいいです。次の日に持ち越すメリットはありません。とはいえ、本当に1問ずつ答え合わせをすると、答えのページを探しているうちに勢いをそがれてペースが落ちたり、次の問題の答えが見えてしまうかもしれません。

 現実的には、答え合わせをするのは「大問一つずつ」くらいが適当でしょう。

 答え合わせはすぐやる!

(大問で)一問ずつやる!

 というのが第一の原則です。

 ■第二の原則:自分の解答は消さない

 小学生を指導していて多いのが、答え合わせで間違うと、自分の解答を消しゴムで消してしまう子です。

 これは、せっかく勉強してもその効率を悪くする、非常にもったいない行動です。なぜなら、「自分が間違えたパターン」を確認することは、学びと得点の宝庫だからです。

 教える立場になるとわかるのは、「間違える子はだいたい同じところで間違える」ということです。

 同じ計算ミスにしても、くり上がりの足し算を間違える子はいつもくり上がりの足し算を間違えるし、7の段の掛け算を間違える子はいつも7の段の掛け算を間違えます。

 要するに、間違えるパターンはいつも同じになりがちなのですが、不思議なことに自分ではなかなか気づきません。自分では当たり前すぎる行動なので、意識が向かないのですね。

 右足から歩きだす人と左足から歩きだす人、それぞれいますが、自分はどちらか普段は意識しないのでわかりません。動画を撮ってもらって観ると、初めてわかります。これと同じで、自分の解答が残っていないと自分の間違えるパターンがわからず改善しようがないのです。

 間違えた解答を消したくなる理由は理解できます。

 思い出したくない、人に知られたくない、恥ずかしい黒歴史というのは誰にでもあります。「あの子に告白したけどフラれた思い出」とかですね。

 確かに、間違いを記録に残すのは恥ずかしく感じますが、少なくとも勉強に関しては、記録に残した方が間違いなく役に立ちます。自分のパターンを把握して修正した結果、成績もよくなります。

 勉強で効果を上げたければ、間違っていてもなんでも、自分の解答は消さないで下さい。そして、正しい解答を赤鉛筆や色ペンで加えるようにしましょう。

 これが答え合わせを成果に直結させる早道です。

 ■第三の原則:答え合わせの「後」に時間をかける

 私は、勉強時間はなるべく短い方がよいと考えていますが、どうしてもある程度の時間は必要になってきます。ただし、どうせ時間をかけるなら、なるべく効果が高いところに時間をかけるべきです。

 この点から言うと、どうせ勉強時間をかえるなら、問題を解くときではなく、答え合わせとその後に時間を取りましょう。

 たとえば、わからない問題が出てきたら、あまり悩まずに次に進みます。あるいはすぐにその問題の解答・解説を確認します。ただし、解答・解説は納得するまで時間をかけて理解しましょう。そして、できなかった問題は解き直すのが望ましいです。

 これに関しては、逆のことをしてしまう人が多いです。問題を解くことをすぐにあきらめてしまうのは粘り強さに欠けている気がするので、時間がかかってもなるべく自分の力で解こうとがんばる人たちです。もちろん、それで楽しく勉強できればいいのですが、実際は時間がかかるだけで疲れてしまい、分量もなかなか進まないということになりがちです。

 繰り返しますが、どうせ勉強にエネルギーと時間を使うなら、答え合わせの「後」にそのエネルギーを使って理解を深めましょう。悩んで、時間をかけて1問を解くよりも、できない問題があったならば2回その問題を解いた方が効率よく定着するのです。

 さてここで問題になるのは、間違えた問題の解答・解説を見てもやっぱり理解できないときです。

 このようなときはなるべく、先生やできる友達に質問して理解できないことを潰しておきましょうもし、解答・解説を読んでも理解できないことが多ければ、おそらくその教材は自分に合っていません。解説がわかりやすい教材を探したり、教材の難易度を下げたりする必要があるでしょう。

 ■第四の原則:問題に○×△をつける

 答え合わせをしたら、「問題に」○×△をつけましょう教科書や問題集を汚したくないと考える人がいますが、必ずつけてください。

 正解していたら○、間違っていたら×、できたけど不安要素があるのは△、といった具合です。マークはなんでもいいですし、△は使っても使わなくてもいいです。マークでなくて正解したら緑、間違っていたら黄色……のように色を使ってもよいです。何にしろ、問題に正解か不正解か記録しましょう。

 勉強を進めるうえで重要なのは、何時間したかではなく、得点が何点だったかでもなく「どこがわかってどこがわかっていないのか?」ということです。そして願わくば、わかっていないところをわかるようにしたいのです。

 問題に○×△をつけることによって、自分専用にカスタマイズされたオリジナル問題集ができあがります。自分がわかっていないところだけ集中して出題されるので、非常に効率がいい問題集になるのです。

 正解できた問題をもう一回やる必要はあまりありません。それよりも、できなかった問題について「なぜできなかったのか?」を分析して改善することの方がはるかに重要です。もちろん、できた問題でも次にできる保証はなく、反復練習をした方が定着するのは確かですが、それは勉強時間に余裕があって、さらに成績を伸ばしたい、得点を上げたいというときだけでじゅうぶんです。

 ■第五の原則:×が多いほど喜びましょう!

 答え合わせが好きでない人、答え合わせに気が乗らない人は、おそらく×がつくのが怖いのだと思います。

 なにしろ、「バツ」の語源は「罰点」「罰」と言われ、×を書いたら否が応でも「罰」を想像してしまいます。

 誰でも罰は受けたくないので、答え合わせを避けたくなります。

 しかし、実際の勉強では、×は罰ではありません。ここを直せば成長する、テストの点になるという得点源なのです。

 だから、答え合わせで×が多いほど、それは得点源をたくさん見つけたということなので、本当は喜ぶべきです。もし全部○だったら、それは勉強していなくても全部できたということなので、勉強が時間の無駄だったと言ってもいいほどです。

 問題を解いて全部正解になるような問題集であれば、簡単すぎて成長につながらない勉強をしているのかもしれません。

 第一の原則:答え合わせは「すぐ」やる

 第二の原則:自分の解答は消さない

 第三の原則:答え合わせの「後」に時間をかける

 第四の原則:問題に○×△をつける

 第五の原則:×が多いほど喜びましょう!

 ここで紹介した「答え合わせ五原則」は誰でも必ず実行できますし、勉強時間が増えることもありません。解けない問題に悩んだり、消しゴムを使う必要がないので、むしろ勉強時間を減らすことができます。それでいて勉強は楽しくなり効率が上がる技術です。子どもの勉強に限らず、大人になっても活用して欲しい技術です。

引用文献『賢者の勉強技術 短時間で成果を上げる「楽しく学ぶ子」の育て方』(谷川祐基 CCCメディアハウス)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次