なぜ偏差値の高い高校を目指すのか?
私は普段は中学生の指導が最も多いですが、高校生を指導することもあります。中学生は地元の中学に通う生徒ばかりですが、高校生はみんな通っている高校はバラバラです。それこそ、2時間近くかけて通っている生徒もいれば、自転車で10分程度の高校に通っている生徒もいます。
当然、学校が違うわけなので扱っている教科書も違います。勉強する科目も違います。その科目の授業時間も違います。授業がある日数も違いますし、授業時間も違います(多い学校は土曜日も授業があり、平日は7時間目まであります)。学校行事も違いますし、時期も違います。本当に千差万別、みんなバラバラです。
ただし、勉強面に目を向けると明らかに序列があります。特に公立高校の場合には入試難易度が高ければ高いほど、そのぶん難しいことをやっています。反対に、入試難易度が低い学校ほど、そのぶんあまり高校の勉強には力が入っていません。
偏差値60以上の学校
中学校の勉強はある程度定着している前提で授業が始まります。高校2年生までに高校内容の勉強の大半を終わらせる学校が多くあります。英語や数学、国語などは週に6~8時間くらいあり、高校1年生の最初から徹底的に高校内容の勉強をしていきます。また、大学受験を見据えて市販の問題集や参考書などが配られて、大学入試に良く出題される問題などが定期テストで出されてきます。一般受験で上位の大学を目指す雰囲気があります。
偏差値50前後の学校
中学校の復習をしつつも、3年間かけて高校生の内容を勉強していく学校が多いようです。学校によっては主要科目の学習に力を入れているところもありますが、それほど重視していない学校もあります。大学受験も難関大学を目指すというよりも、AOや推薦入試で中堅以下の大学を目指す生徒が多いです。
偏差値40未満の学校
中学校の勉強があまり定着していないために中学校の内容から復習します。学校によっては高校1年生の勉強の大半は中学校の復習になります。英語はbe動詞から、数学は正負の計算や文字式など中学校1年生の最初の単元から復習していきます。基礎・基本の勉強が中心になるため、学校の勉強だけでは大学受験の一般受験やセンター試験への対応は難しいことがあります。
もちろん高校に入ってから自分がどれだけ一生懸命取り組んで勉強するかが一番大切です。ここは間違いありません。全く勉強しなければどんな高校に進学してもついていくのは困難でしょうし、一生懸命勉強すれば成績は伸びていくでしょう。大学進学の際の選択肢が広がるはずです。ただ、その学校の中のレベルや環境は進学した学校によって大きく違うということは知っておいてください。
高校に入ってからついていけるか心配
高校入試は通過点、高校でどう過ごすかがカギ
ワンランク上の高校を目指して結果的に合格して進学したとしてもついていけるか心配という声も聞きます。ワンランク上を目指すくらいなら、自分のレベルあるいはワンランク下げたほうが進学後も楽に過ごせるのではないかという考えも聞きます。
実はこの話は高校受験特有の心配なのです。中学受験や大学受験で「進学してついていけなかったらどうしよう……」という心配をする人はあまり多くはありません。むしろワンランク、いやツーランク上の学校になんとかして合格したいという気持ちがとても強く出るのが中学入試や大学入試なのです。
実際に過去の受験生のなかには、合格最低点で進学した生徒がいました。なぜ合格最低点だとわかったのかというと「補欠合格」だったからです。その学校では当時補欠は「1」「2」「3」というふうに順番を出していました。私が担当していた生徒は「7」の生徒です。「6」までは合格発表後数日に繰り上がったものの、その後は繰り上がらず、補欠「7」の生徒は別の学校に進学する手続きを済ませ、制服も買ってしまった頃に、なんと「7」が繰り上がったのです。結果的にはもうひとつの学校に振り込んだ入学金と買ってしまった制服は無駄になりましたが、喜んで第一志望の学校に進学しました。
また、同じ塾内で別の教室に「8」の生徒がいましたが、「8」は繰り上がることはありませんでした。
補欠「7」の生徒は、文字通り合格最低点で合格した生徒なのです。
この生徒は合格最低点で進学したのだから、その学校の授業についていくのが難しいと思う方もいるかもしれません。
しかし、1年後に会ったときには学年トップ10%に入る好成績でした。入ってからも本人なりに一生懸命勉強して、目指していた大学にも進学できたそうです。
一方で、余裕で合格できたであろう生徒もいます。模試でも合格率90%、楽な受験をしたいということで偏差値7~8下げ志望校に合格。しかし、結局そのモチベーションでは高校進学後、最初はなんとか成績を維持できていたものの、高1が終わるころには平均点以下、高2になるといくつか赤点をとってしまうほどまで低迷してしまいました。高校入試の段階では間違いなく、その生徒はトップレベルで合格できていたはずなのに。
結局のところ、高校入試はゴールではなくスタート地点でしかないのです。その高校に入学してからどんな学校生活を送るのか、どんな友達関係ができるのか、どういう環境で3年間勉強するのかで、大きく変わってきます。
ギリギリ合格でも、トップ合格でも、入ってからどう過ごすかを考えて受験校選びをすることをお勧めします。
引用文献:『最も効率良く成績を上げる 中学生の戦略的勉強法』(Dr. 関塾志津駅校 高野良太著 エール出版社)