人として当たり前の感情に従う(福沢諭吉・小畑篤次郎)

 どこに圧政を好んで善政を嫌う人がいるでしょうか。どこに自国が富み栄えて強くなることを望まない人がいるでしょうか。どこに自国を外国に馬鹿にされて泣き寝入りする人がいるでしょうか。

 これはつまり、人として当たり前の感情です。

 現代に生まれて、国の役に立ちたいという人は、なにも体を(こく)使()したり、思い悩んだりするほど、身を尽くさなくてもいいのです。

 ただその大事な目的は、この人としての当たり前の感情にそって、まず日ごろの行いを正しくし、学問に熱意を持って、広くものごとを知り、それぞれの立場にふさわしい知恵や徳を備えることです。

 政府にとって統治しやすく、また民衆にとってその支配が苦しいものでないよう、互いにメリットのあるかたちで日本の平和と繁栄が続くことだけを願っています。この本で私が勧めている学問のねらいも、ここにあるのです。

引用文献『学問のすすめ』初編(福沢諭吉 小畑篤次郎 同著)現代語訳 奥野宣之(致知出版) 

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