「明日やろう」と決意して、次の日も勉強しないのはなぜ?(和田秀樹)

「できない自分」から逃げようとしていないか?

 学校の宿題や受験勉強など、「やりたくないなぁ」と思っていることに対しては、あとへあとへと延ばそうとする心理が働く。勉強しなくちゃという気持ちはあるのに、「ご飯を食べてから」「テレビを見てから」「ゲームをやってから」と、ついつい先延ばししてしまう。そして、寝る時間が近づいてくると、決まってこう思う。

「ああ、今日もまたやれなかった。でも明日こそはちゃんと(がん)()るぞ!」

 先に勉強を片づけてから遊んだほうが絶対にいいのはわかっているのに、なかなかそれができない。「そんなダメな自分をどうにか変えたい」と思っている人に、この章では「勉強を先延ばししない」ためのちょっとした()(ふう)(しゅう)(かん)(じゅつ)(しょう)(かい)していく。“勉強グセ”をつけるのは、(じつ)はそんなに(むずか)しいことではないのだ。

 その前に、なぜ勉強を先延ばししようとするのか、その理由を考えてみよう。「やりたいくないから」「もともとやる気がないから」ではない。それだったら、「明日こそ頑張ろう」などと(けつ)()したりしない。では、どうして?

 それは、「やってもできない自分」を(みと)めたくないという気持ちが心の奥に(ひそ)んでいて、それが「やろうとする自分」にブレーキをかけているから。つまり、勉強をしないことによって、「できない自分」を(せい)(とう)(か)しようとしているのではないか。

 人間は、何かうまくいかないことがあったとき、(つ)(ごう)のいい理由や言いわけをつくって自分を(まも)ろうとする(せい)(しん)(ぶん)(せき)(がく)ではこれを「(ぼう)(えい)(き)(せい)」と(よ)ぶ)。たとえば、テストの得点が悪かったとき、「勉強する時間があまりなかったから」とか「気分が乗らずに集中できなかったから」などと言いわけしておけば、とりあえず傷つかずにすむ。早い話が、「自分はバカじゃない。本当はやればできる。だけど、まだ本気モードになっていないから」ということにしておきたいのだ。

 その(うら)には、「もし本気で勉強してできなかったら自分が(みじ)めだ」という不安が潜んでいる可能性がある。その不安を打ち消すのに一番てっとり早いのは、なんだかんだと理由をつけて勉強をしないことなのだ。「やってもできない自分」を認めたくないために、勉強を先延ばししようとする。勉強をしないでいる限り、「やっていないからできない」と言い逃れをして自分を守れる。

 こうした行動を、精神分析学では「(ひ)(にん)と呼ぶ。文字通り「できない自分」を認めようとしない(もと)の行動なのだが、これでは自分を変えられない。「明日から頑張る」の「明日から」が「来月から」になり、さらに「新学期から」「高3の夏休みから」になるのが目に見えているからだ。

「勉強してもできない」のは、100% “やり方” の問題だ!

 そこで、こう考えてほしい。まずは「できない自分」を()(なお)に受け入れ、「できるようになる」ために頑張って勉強に手をつけてみるのだと。「勉強していないからできない」という“言いわけ”を(ふう)(いん)し、逃げられない(じょう)(きょう)をつくるのだ。

 勉強しているのに成績が上がらないこともあるだろうが、そんな自分を惨めに思うことはまったくない。少なくとも、勉強を先延ばしすることで「できない自分」から逃げている人より数万倍も(のぞ)みがある。

「勉強しているのにできない」のには原因がある。特に、これまでほとんど勉強してこなかった人は、基礎力が身についていないため、すぐには成績が上がらない。ここは(が)(まん)しどころだ。どんな科目でも、正しいやり方で勉強すれば必ず(の)びる。ところが、ちょっとやってできないとなると、すぐに「頭が悪い」とか「生まれつきの才能がない」と決めつけ、あきらめてしまう人が少なくない。

 実は「頭が悪いから勉強ができない」という言いわけも、「できない自分」を正当化する否認の一種である。頭が悪い」せいにしておけば、自分を変える努力をしなくてすむ。明らかに自分から逃げている。これでは絶対に進歩しない。

 しかし、(だん)(げん)するが、勉強してもできないのは、100%“やり方”の問題だと考えていい。勉強してもうまくいかないとき、「頭が悪いから」ではなく、「やり方がまずいから」と思えるかどうか。すべてはここにかかっている。

(後略)

引用文献『和田式 勉強のやる気をつくる本 やれない自分を変えるちょっとしたアイデア75』(和田秀樹著 学研教育出版)

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