上位10名に入れるか、下位10名に入るか――それを分ける決定要素が「知能」の高さではないとしたら、なにが決め手になるのだろうか? コックスと助手たちは、何千ページにもおよぶ伝記や資料を丹念に調べながら、301名中の100名について、67項目にわたる性格の特徴を評価した。非常に広範な調査であり、現代心理学で重要とされる性格の特徴をすべて網羅している。
コックスがそれほど多種多様な性格の特徴を調べ上げたのは、偉人たちと一般の人びとを分ける相違点、そしてさきほどの上位10名と下位10名を分ける相違点を明らかにするため、可能なかぎり綿密な調査を実施したかったからだ。
67項目のうち大半については、偉人たちと一般の人びとのあいだに、ほとんど差異は見られなかった。たとえば、偉大な功績を収めた人びとは、外向性や朗らかさ、ユーモアのセンスといった性格の特徴を顕著に備えているかといえば、決してそんなことはなかった。また、学校の成績も必ずしもよいとは限らなかった。
偉人たちと一般の人びとの決定的な相違点は、つぎの4つにまとめられる。この4つの指標は、上位10名と下位10名、つまり「超一流の偉人」と「たんなる偉人」を分ける特徴としてもきわめて顕著だった。
コックスは4つの指標を「動機の持続性」と名付けた。そのうちの2つは、グリット・スケールの「情熱」の項目にほぼ当てはまる。
〈遠くの目標を視野に入れて努力している(その日暮らしとは正反対の態度)。晩年への備えを怠らない。明確な目標に向かって努力している〉
〈いったん取り組んだことは気まぐれにやめない。気分転換に目新しさを求めて新しいものに飛びつかない〉
残りの2つは、グリット・スケールの「粘り強さ」の項目にほぼ当てはまる。
〈意志力の強さ、粘り強さ。いったん目標を決めたら守り抜こうと心に誓っている〉
〈障害にぶつかっても、あきらめずに取り組む。粘り強さ、根気強さ、辛抱強さ〉
総括として、コックスはつぎのように結論を述べている。
「知能のレベルは最高ではなくても、最大限の粘り強さを発揮して努力する人は、知能レベルが最高に高くてもあまり粘り強く努力しない人より、はるかに偉大な功績を収める」
あなたのグリット・スケールのスコアが何点だったとしても、自分自身を見つめ直すよい機会となれば幸いだ。人生で挫折や失敗を味わったときに、自分がどれくらい粘り強くがんばれるかを自覚したのは、大きな進歩と言えるだろう。
また、一つひとつの目標が明確になり、それらがもっとも重要な唯一の目標と結びついているか、あるいは結びついていないかを、この機会にはっきりと認識できたのも、大きな進歩と言える。
引用文献『やり抜く力――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』(アンジェラ・ダックワース著 神崎朗子訳)ダイヤモンド社