「情熱」や「粘り強さ」の鑑のような人をたくさん取材したおかげで、私は「やり抜く力」について多くのことを学んだ。読者のみなさんにも、そんな鉄人たちの頭や心のなかをのぞいて、お手本にしたいと思えるような信念や、態度や、習慣に出会っていただければと思い、本書には彼らとの会話をちりばめてある。
鉄人たちの体験談は、私が米国陸軍士官学校やスペリング大会で実施した、体系的な研究による定量分析を補完するデータでもある。その全体像から、成熟した「やり抜く力」の鉄人たちに共通する4つの特徴が見えてくる。
ものごとを途中でやめるときの4つの理由とは正反対で、年月とともに、つぎの1から4の要素が順番に強くなっていく。
1.〈興味〉自分のやっていることを心から楽しんでこそ「情熱」が生まれる。私がインタビューをした人びとはいずれも、自分の仕事のなかで、あまり楽しいとは思えない部分をはっきりと認識しており、多くの人はちっとも楽しいと思えないことも、少なからず我慢していた。とはいえ全体的には、目標に向かって努力することに喜びや意義を感じていた。だからこそ彼らは、尽きせぬ興味と子どものような好奇心をもって「この仕事が大好きだ」と言う。
2.〈練習〉「粘り強さ」のひとつの表れは、「きのうよりも上手になるように」と、日々の努力を怠らないことだ。だからこそ、ひとつの分野に深く興味を持ったら、わき目もふらずに打ち込んで、自分のスキルを上回る目標を設定してはそれをクリアする「練習」に励む必要がある。自分の弱点をはっきりと認識し、それを克服するための努力を日々繰り返し、何年も続けなければならない。
また、「やり抜く力」が強いということは、慢心しないことでもある。分野を問わず、どれほど道を究めていても、「やり抜く力」の鉄人たちは、まるで決まり文句のように「なにが何でも、もっとうまくなりたい!」と口にする。
3.〈目的〉自分の仕事は重要だと確信してこそ、「情熱」が実を結ぶ。目的意識を感じないものに、興味を一生持ち続けるのは難しい。だからこそ、自分の仕事は個人的に面白いだけでなく、ほかの人びとのためにも役立つと思えることが絶対に必要だ。
なかには早くから目的意識に目覚める人もいるが、多くの場合は、ひとつのことに興味を持ち続け、何年も鍛錬を重ねたのちに、「人の役に立ちたい」という意識が強くなるようだ。「やり抜く力」の鉄人のなかでも、成熟をきわめた人たちは、みな口を揃えて同じことを言った。「私の仕事は重要です。個人的にも、世の中にとっても」
4.〈希望〉希望は困難に立ち向かうための「粘り強さ」だ。本書では、興味、練習、目的のあとに希望を採り上げるが、希望は「やり抜く力」の最終段階だけでなく、あらゆる段階に欠かせない。最初の一歩を踏み出すときからやり遂げるまで、ときには困難にぶつかり、不安になっても、ひたすら自分の道を歩み続ける姿勢は、はかり知れないほど重要だ。
私たちはときに大小さまざまな挫折を経験して、打ちのめされる。打ちのめされたままでは「やり抜く力」も失われてしまうが、立ち上がれば、「やり抜く力」を発揮することができる。
(中略)
「興味」「練習」「目的」「希望」という4つの特徴は、もともと「あるかないか」という性質のものではない。興味の対象は自分で見つけ、さらに興味を深めることができる。鍛錬の習慣も、自分で身につけることができる。目的意識を養い、深い意義を感じることができる。そして希望を持つことも、やはり学ぶことができる。
あなたは自分の「やり抜く力」を内側から伸ばすことができる。その方法を知りたければ、本書を読み進めよう。
引用文献『やり抜く力――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』(アンジェラ・ダックワース著 神崎朗子訳)ダイヤモンド社