「優秀な人」の姿勢を知る
数年前、私は大学院生のローレン・エスクライス・ウィンクラーとともに、子どもたちに「意図的な練習」を教えることにした。
まず、ストーリーや漫画を使った自習用教材を用意し、「意図的な練習」と「効果の低い学習法」の重要なちがいを理解できるようにした。そしてどんな分野でも、優秀な人たちは、もともと持っている能力に関係なく「意図的な練習」をとおして技術を磨くことを、子どもたちに説明した。
(中略)
そして、自分がまだできないことに挑戦し、失敗して、何とかうまく行くように別の方法を見つけることこそ、エキスパートの練習法であること。また、うまくいかなくてイライラしても、練習法がまちがっているとは限らないし、練習中に「もっとうまくできたらいいのに」ともどかしく思うのは、いたってふつうのことであることを説明した。
つぎに、私たちはこの調査の成果が、さまざまなプラセボ対照実験においてどう表れるかを調べた。
その結果、生徒たちの「練習」や「達成」についての考え方は、変えられることが明らかになった。
(中略)
さらに、成績がクラスで平均以下だった生徒たちの場合、「意図的な練習」について学んだあとは、通知表の成績に向上が見られた。
毎日、同じ時間、同じ場所での「習慣」をつくる
「意図的な練習」を最大限に活用するための第2の提案は、「習慣化すること」。
具体的に説明すると、「意図的な練習」を行うために、自分にとってもっとも快適な時間と場所を見つけることだ。いったん決めたら、毎日、同じ時間に同じ場所で「意図的な練習」を行う。なぜなら大変なことをするには「ルーティーン」にまさる手段はないからだ。
私自身の研究も含め、多くの研究によって明らかになっているとおり、毎日同じ時間に同じ場所で練習するのを習慣にすれば、重たい腰を上げなくても、しぜんと練習に取りかかることができる。
「いま、この瞬間」の自分を見ながらチャレンジする
「意図的な練習」を最大限に活用するための第3の提案は、「意図的な練習」への向き合い方を変えること。
スペリング大会のデータを見直したところ、「やり抜く力」の強い生徒たちは、ほかの生徒たちよりも「意図的な練習」を「楽しい」と思っていることがわかった。そこで、私は競泳コーチのテリー・ラクリンに電話をした。
(中略)
「意図的な練習だって楽しめるはずですよ」ラクリンは言った。「その気になれば、チャレンジを恐れずに受けとめられるようになります。目標を明確に意識し、フィードバックを受け、意図的な練習でやるべきことをすべてこなしても、いい気分でいることはできます。そのためには批判をせず、”いま、この瞬間"の自分を見つめることが重要です。批判はチャレンジを楽しむ邪魔になるので、批判を取り除いて自分をラクにするんです」
(中略)
赤ちゃんや幼児は、失敗から学ぶことが苦にならないと言っている。赤ちゃんが座りかたを覚えたり、幼児が歩きかたを覚えたりするようすを見てみよう。なかなかうまく行かず、何度も失敗しても、がんばって挑戦している。ものすごく集中して、周りからたくさんのフィードバックをもらって、多くのことを学んでいる。
「子どもたちはコーチや、親や、仲間や、メディアと接するなかで、失敗は悪いことなんだと思い込んでしまう。そうすると慎重になりすぎて、思い切って挑戦しようとか、全力でぶつかってみようなんて思わなくなるんです」
「羞恥心を抱いても、なにも解決しません」
引用文献『やり抜く力――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』(アンジェラ・ダックワース著 神崎朗子訳)ダイヤモンド社