国語は最優先で身につけるべき言語(竹内薫) 

国語は最優先で身につけるべき言語

 国語は重要です。英数国の三つの言語のうち、しっかりと身につけるべき優先度がもっとも高いのが国語です。

 それは、「日本人たるもの、国語を大切にすべし」といった、精神論的な意味合いではありません。

 ノーベル賞受賞者が多い先進国や大国には、ある共通した(とく)(ちょう)があります。それは、自国の言葉、つまり母国語で高等教育(大学などの高度な学術的、専門的教育)が行われているということです。

 たとえば、英語を母国語とするアメリカやイギリスを除くと、フランスの高等教育はフランス語、ドイツはドイツ語で行われています。また、ロシアも国外で(かつ)(やく)しているロシア出身者を(ふく)めて、ノーベル賞受賞者を数多く輩出していますが、やはり高等教育はロシア語で行われています。

 日本はいうまでもなく、日本語ですね。

 じつは、これは当たり前のことではないのです。

 世界的に見れば、母国語ではなく、英語で高等教育が行われている国も少なからず存在します。

 学生が母国語と英語の両方ができるバイリンガルであれば、それでも支障はないと思うかもしれませんが、そうとはいえないのです。

 バイリンガルとは、母国語と外国語の能力が同等である、という意味ではなく、原則的に母国語のほうが優位であり、母国語は(かん)(ぺき)に身につけていなければならないということです。

 つまり、日本人のバイリンガルであれば、文法や()()、敬語の使い方などすべてにおいて、日本語だけを話す同世代の日本人と同レベルの日本語能力を(かく)(とく)していなければならないのです。

 そうでなければ、深い思考ができないからです。ノーベル賞を受賞するような人たちは、ものすごく難しいことを考えていますが、そこで使っている言語は、やはり母国語です。

 ですから、母国語がしっかりしていないと、そもそも深く考えることができないのです。

 英数国の3言語のうち、まず根幹に置くべきは国語です。国語は、それを使って考える「思考言語」です。これを(かん)(ぺき)にしておかなければ、まともに考えることすらできません。そのうえで、英語でコミュニケーションがとれることが必要になります。

 2カ国語を話すバイリンガルはたくさんいますが、必ずどちらかの言語のほうが優位で、それが思考言語になっています。日本で生まれ育った日本人の場合は、ほぼ確実に日本語が優位です。

 まず日本語を(かん)(ぺき)にしたうえで、日本語で考えたことを(しゅん)()に英語に(へん)(かん)したり、英語で入ってきた情報を日本語に(へん)(かん)したりする力を身につける、という順番になります。

ポイント 国語が(かん)(ぺき)でないと深く考えることはできない。

引用文献『学年ビリから東大へ進み、作家になった私の勉強法』(竹内薫著 PHP研究所)

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