しっかり時間をかけて勉強を頑張っているのに成果が出ない……。
もし子どもがそんな悩みを抱えているのなら、つまりは、勉強の効率が悪いということです。そして、その勉強の効率が悪い理由は、決して頭が悪いせいでも集中力がないせいでもありません。必要な勉強技術が身についていないというだけです。
ここで、勉強するにあたってどうしても外せないのに、なぜか学校や塾で教えてもらえない一つの技術を紹介します。本当は重要なのに、あまりに軽視されているのです。それは、
「答え合わせ」の技術
です。なぜ「答え合わせ」が重要なのか、ピンとこない方も多いでしょう。しかし、いわゆる成績が優秀な子は、間違いなくこの技術に長けています。
ビジネスの世界では、PDCAサイクルという言葉があります。
Plan(計画する)、Do(実行する)、Check(確認する)、Action(改善行動する)の頭文字です。新入社員研修にもよく使われるので知っている方も多いと思いますが、念のために説明します。
たとえば「燃費のいいクルマを開発したい!」という仕事がはじまったら、まず計画します(Plan)。1リットルで30キロメートル走る車にしたいと目標を決めたら、その目標にそってエンジンや車体を設計するわけです。そして、実際に作ってみます(Do)。クルマができたら性能を確認します(Check)。いざ測定してみるとガソリン1リットルで20キロメートルしか走れなかったとします。これは目標通りのクルマが作れなかったわけですが、別に仕事が失敗したわけではありません。目標通りにならなかった理由を探って、改善策を考えればよいのです(Action)。エンジンの排気量を変えようとか、車体の材料を変えてみようとかですね。
そして、この改善策をもとにして次の計画を立てます(Plan)。新しい材料を使って車体を設計し直します。
PDCAを繰り返すことで、1巡目では20キロメートルしか走れなかったクルマが2巡目には25キロメートル走れるようになり、3巡目には30キロメートル走れるようになったりするのです。
がむしゃらに実行するだけではなかなか目標通りの仕事にはなりませんが、仕事を見直して、改善策を積み上げることで次の成果が上がっていくのです。
これはビジネスの話ですが、見直して改善策を積み上げることの大切さは、実は勉強でも同じことです。
たとえば、問題集を解いたら、必ず答え合わせをします。すると、○がついたり×がついたりするでしょう。ここで重要なのはできたかできなかったではなく、
「なぜこの問題は○でこの問題は×だったのか?」
「では×だった問題を○にするにはどうすればいいのか?」
を考えることです。×だった理由はいろいろあります。
そもそもその単元を理解していなかったのかもしれません。
問題をよく読んでいなかったのかもしれません。
計算ミスかもしれません。
漢字が違っていたのかもしれません。
×だった理由それぞれに対して改善策があります。
自分の間違いから理解を深め、改善策を見つけて次につなげることこそが勉強なのです。クルマの燃費が上がったのは、改善策をとったからであって、この改善策が努力です。クルマの開発者が何時間残業したのかは関係ありません。
同じように、勉強の成果も何時間机に向かったではなく、答え合わせを通じて何を得られたかにかかっています。
どんなに問題集を解いたとしても、やりっぱなしでは身につきません。がむしゃらにDoするだけで他のPlan、Check、Actionを行わないのは、せっかく勉強しても4分の1しか勉強していることになりません。たったの25%です。
残りの75%、8割近くが答え合わせや見直しにかかっています。逆に言うと、ただ勉強するだけできちんと答え合わせをしないのは、せっかく勉強した8割近くを捨てているようなものなのです。
宿題で、解答を丸写しして提出するのはいけないと言われますが、これは何もズルいからいけないというわけではありません。勉強でいちばん美味しい部分である「答え合わせ」をすっ飛ばしてしまうので、いくら勉強しても身につかないのです。
引用文献『賢者の勉強技術 短時間で成果を上げる「楽しく学ぶ子」の育て方』
(谷川祐基 CCCメディアハウス)