「やっているフリ」をしない(和田秀樹)

 難しい問題を目の前に、じっと考え込む。

 30分たっても1時間たっても手掛かりが見つからない。鉛筆はピクリとも動かない。それでも考え続ける。しかし、実際にはたいして頭が働いていないことが多い。

「できないこと」を無理にやろうとしていると、時間を浪費するだけでなく、へたをすると「考えているフリ」をするのがうまくなるだけ、ということにもなりかねない。

「できること」や「できそうなこと」から手をつけようとせず、今の実力では解けるはずのない問題ばかりやりたがる。そんな受験生も少なくない。

 今の自分には解けないことがわかっているのに、1時間でも2時間でも考え込む。難しすぎて理解できない参考書の解説を、ただ眺めているだけで時間を(つぶ)す。

 その状態を客観的に見ると、まさに「考えているフリ」をしているだけで、頭はほとんど働いていない。

 自分では一所懸命考えている“つもり”になっている。だが実際は、空想の世界で“勉強ごっこ”をしているのに近い。

 簡単なことができないと自分が傷つくが、難しいことができないとなれば傷つかない。

 できない自分を認めたくないから、できっこないことばかりやろうとする。精神分析学で言う「(とう)()」の一種である。

 そうならないためには、とにかく「できること」から地道に積み上げていくことが(かん)(じん)だ。

 簡単なことがわからない、できないのは、恥ずかしいことでもなんでもない。それを「わかる」「できる」ようにするために勉強しているのだから。

 基礎がしっかり固まってくれば、今は「難しすぎる」と感じることも、「十分にやれそう」という気になれる勉強するフリだけうまくなっても、この感覚は得られない。

「たまには難問にチャレンジしてみる」であればOK

 基礎を中心に進めながら、たまに難問にチャレンジしてみるのはいい。できなくても「まだまだ力不足、もっと基礎をしっかりさせなければ」という気になる。もし解けなければ、力がついてきたことを実感できる。

引用文献『和田式 勉強のやる気をつくる本 やれない自分を変えるちょっとしたアイデア75』

(和田秀樹著 学研教育出版)

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